猫カフェ店舗で保護猫活動
ねこびやか88番地
猫カフェ店舗での保護猫活動には様々な工夫が必要です。保護猫の譲渡会場としてだけではなく、子猫の育成、譲渡後のアフターフォローまで。また、支援してくる人がつながる場所でもあります。
前回に引き続き「catcafe ねこびやか -88番地-」オーナーの八木さんに、猫カフェ店舗のデザインや保護猫活動について伺いました。八木さんは神戸元町の猫カフェNyannyの創業スタッフでもあり、現在は姫路市で猫カフェ2店舗を運営されています。
会員制猫カフェでの店舗の工夫
姫路駅前店「黒猫cm」ではお世話になりました。今回もよろしくお願いします。本当に隠れ家的なお店ですね。最初に来たときは店舗を見つけられず素通りしてしまいました。
隠れすぎだとよく言われます(笑) 住所も姫路駅前店「黒猫cm」で会員になっていただいた方だけにお知らせしてるんですよ。
徹底されていますね。隠れ家的な猫カフェにして何か変化はありましたか?
私だけではなく、お客様同士のつながりが強くなったように感じています。本当に猫がお好きな方が来店されますので、初めてお会いするお客様同士でも猫の話題で盛り上がることが多いです。
猫を通して人のつながりができる?
そうなんです。不定期ですが、営業時間後にテーマを決めて食事会をしたり、好きな楽器を練習する会などもあります。このときの参加費は里親探し活動のコストに充てさせていただいています。
イベント自体が里親探し活動の一環になっているんですね。イベントの企画は八木さんがされるのですか?
お客様の声から生まれることが多いでしょうか。準備や段取りまでしていただいて助けられっぱなしです。私自身、88番地に来ていただいている方々にはお客様以上のつながりを感じます。お客様・お友達というだけではなく、猫の里親探し活動も含めて応援していただいている感覚です。
それぞれの時間を過ごせる店舗デザイン
天井が高くて、ゆったりした雰囲気ですね。広さはどれぐらいですか?
猫カフェスペース・子猫ルーム・多目的スペースを合わせると20坪ほどになると思います。あとバックヤードが10坪ほどあります。倉庫だった場所をリノベーションしました。
ロフトから見える川の景色がすてきです。
昔から川辺が好きだったので、この場所を選んだんですよ。
川辺を見ながら座っていると時間を忘れそうになります。ロフト上の一部は猫専用なんですか?
はい、猫の休憩場所にしてます。ここにいる子たちは人好きな子が多いですが、それでもゆっくりと休めるスペースは必要かなと。
その下に漫画スペース。この漫画スペースは秘密基地のようで良いですね。
店舗だと意識して狭い空間を作ることは少ないかもしれません。でも、前から作ってみたかったんです。
ひとつの部屋の中に開放的な空間と狭い空間があっておもしろいです。壁があるわけでもないのに、それぞれ別の場所のように感じます。
猫カフェに来られるお客様にもいろいろな方がいらっしゃいます。お話をされたい方、本を読んで過ごしたい方。それぞれの過ごし方を一つの空間で楽しんでもらえたら嬉しいです。
店舗としての工夫を教えてください。姫路駅前店「黒猫cm」との違いは何でしょう?
部屋の造りでいうと、子猫ルームと多目的ルームでしょうか。保護猫と里親希望者のお見合いの場所としても使えるよう間取りや内装を考えました。多目的ルームからガラス越しに子猫ルームの様子を見ることもできます。
子猫はずっと子猫ルームの中で育てる?
月齢によります。 姫路市の動物管理センター から処分予定の子たちを引き取って、授乳期間中は私の家で育てます。その後、離乳食に移ったらボランティアさん宅で預かっていただいて検査・ワクチンを待ちます。こちらの子猫ルームに移すのはその後ですから、月齢でいうと4~6ヶ月でしょうか。
離乳食の間はボランティアさん宅で育ててるんだ。
はい、離乳食が食べられるようになると、子猫も少し落ち着きますのでボランティアさんに預かっていただきます。そうすると、すぐに次の子猫を動物管理センターから引き取ることができますから。
ボランティアさんの協力があって子猫ルームにたどり着くと。子猫ルームのケージですが、後ろを向いていますね?
子猫は好奇心旺盛で人がいると疲れていても遊び続けてしまいます。ですから、ケージに入れられている時は人が見えないようにケージを配置しているんです。
なるほど、遊びすぎないようにしているんですね。子猫は猫カフェスペースへは出さないのですか?
他の猫や人と会うことで社会性を身につけますから、様子を見つつ猫カフェスペースで遊ばせます。ただ、成長期の子猫は睡眠時間が18~20時間は必要ですから、猫カフェスペースで 過ごさせるのは2・3時間程度です。
子猫の成長のために時間を制限してるわけだ。
里親探し活動を通して関わる人にも幸せになってほしい
多目的ルームで販売されている雑貨は手作り品ですか?
はい、すべてお客様が作られた雑貨です。売り上げの一部(作家さんによっては全額)を募金に入れていただいています。ねこすく募金といいまして、子猫のワクチンや医療費に充てさせていただいています。
お客さんが作られて、それを他のお客さんが買い、その売り上げが募金になる。良い循環ですね。
自分の手仕事が何かの役に立つって楽しいですよね。大げさかもしれませんが、小さな幸せの一つだと思うんですよ。88番地がそういうことができる場所であればいいなと。お互い好きな人同士で何かができればと思って、多目的ルームのことを「相思相愛ルーム」と呼んでいます。
お客さんと相思相愛!? おもしろいネーミングですね。お菓子がたくさんありますが販売もされてるのですか?
いえいえ、これはお客さんからの差し入れなんですよ。この部屋でお客様同士でシェアしていただいてます。
これ全部、差し入れなんですね。まさに相思相愛。
ご旅行や出張のお土産にいただいたりと、本当にありがたいです。
猫カフェだからできる猫の里親探し活動
猫カフェ経営と里親探しを同時にするのは大変ではないですか?
大変です(笑)ただ、どちらも私にとっては無くてはならないものです。猫カフェがあることで多くの猫好きさんと出会えますし、里親希望者さんと子猫のお見合い場所としても使えますから。
猫カフェが里親探し活動に欠かせない場所になっている?
そうですね。もし猫カフェがなければ、里親探しは今より難しくなると思います。
猫の里親探し活動について聞かせてください。年間でどれぐらいの猫たちを里親希望者の方に譲渡されているのですか?
40~60匹ぐらいでしょうか。ボランティアさんの受け入れ状態や姫路市の動物管理センターへ持ち込まれた猫の数・タイミングによって変わります。累計だと、200匹以上(2016/12月現在)になります。
かなりの数ですね。町中での保護などもされているのですか?
町中での保護はしていません。 姫路市の動物管理センターに持ち込まれた猫たちを引き取って里親さんを探しています。猫の保護に関しては、いろいろな活動をされている方がいて形が決まっているわけではないんですよ。わたしの場合は、 動物管理センターに持ち込まれた猫たちを引き取っています。この子たちは譲渡希望者が現れないと処分されてしまいますから。
処分予定の子猫を優先的に助けているわけですね。保護猫活動を始めたきっかけは何ですか?
きっかけは保護猫活動をされている方から子猫2匹を譲り受けたことでした。神戸の猫カフェで働いていた頃の話です。2007年頃でしょうか、その頃は猫カフェといえば純血種の猫がいる場所だったのですが、猫好きのお客さんと「純血でもミックスでも同じようにかわいい」という話をよくしていました。その流れで、それならば、保護猫を猫カフェで受け入れようという話になって、お譲りいただいたのがはじまりです。
最近は保護猫カフェが増えていますが、以前はそうではなかったんですね。
そうなんですよ。その後、姫路で猫カフェをオープンしたのですが、手続きなどで動物管理センターを訪れる機会があり、初めて処分される猫たちを目の当たりにしました。その時に、意味も無く猫の命が奪われていくことが「嫌だな」と感じたんです。それ以来、殺処分になってしまう猫を動物管理センターから引き取って里親を探す活動を続けています。
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きっかけになった二匹「琴」と「若」。現在は引退して八木さん宅で悠々自適に暮らしているそうです。[琴若姉弟] 引退日
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里親探しで最も大変なことは何ですか?
やはり、里親になってもらうことだと思います。これは後から気づいたことですが、猫カフェを経営しているおかげで自然と猫好きな方とお会いできる機会が増え、譲渡につながっていると思います。ですから、今後も猫好きな方との縁がつながるよう猫カフェ経営もしっかりやっていきたいです。
たしかに猫カフェは猫好きが集まりますし、お見合いの場所として最適ですね。
あとは、続けることでしょうか。 譲渡後も、子猫の成長や育て方の相談をしにきていただいたり、同じような境遇の後輩猫たちを応援していただける場所にしていきたいです。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。
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今回、お話をうかがった八木さんは姫路市動物愛護推進委員も務められています。お店や里親探しの様子はねこびやか88番地ブログでご覧ください。88番地で印象的だったのは、猫たちが人間を怖がっておらず健康状態が非常に良かったことです。猫の里親にご興味のある方は、猫カフェ姫路駅前店「黒猫cm」でスタッフに声をかけていただくか電話でお問い合わせくださいとのことです。